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『俵らんど物語』(たわらんどものがたり) 筆:うつみしこう
自由庵憧鶏
じゆうあんしょうけい
Vol.7 水戸黄門-The vice-general of Edo-bakufu-
俵津に於いては黄門さまの様な存在
先々代 公民館長 先代 公民館長
平日の午後四時は、俵津の年寄りのゴールデン・タイムが始まる時間だ。
テレビの『水戸黄門』の再放送があるのだ。
この時間帯には他に『京都迷宮案内』とか『科捜研の女』とか過去に放映された人気番組が目白押しだが、年寄りの一番人気はやはり黄門様だ。何たって肩がこらない。筋がわかりやすくて安心して見ていられる。
ビールを飲みながら、黄門さまご一行の活躍に声援を送るのが何よりの楽しみなのだ。
そして、日中たまに年寄りが集まると、『水戸黄門』談義に花が咲くこともある。こんな具合に。
老人A 水戸黄門はいつ見ても面白いのお。あれ見ながら飲ると酒がうまいわい。ところでみんな、どの黄門さまが一番エエと思うかの。
老人B わしは、やっぱり初代の東野英治郎がええわい。ちいとガラは悪いが、あっはっはっはのあの高笑いは東野が最高や。快活でスカーッとする何とも言えん笑い方や。新劇の舞台で鍛えた演技力も抜群やし。凄みもある。
老人C おらは、二代目の西村晃や。何といっても品がある。とぼけた味のユーモアがある。歴代ナンバーワンは動かせん。
A いやいや品といえば、最後の黄門さま・里見浩太郎がいちばんぞ。あの落ち着き払った堂々たる存在感。もともとこの番組は里見のためにあるようなもんや。助さん役で最初のほうからずうっと出てて、全部の黄門さまを見てるからあの風格が生まれるんやろな。
B そうかの。わしにはあんまりおさまり過ぎてつまらんがの。
C 佐野浅夫の名が出んな。彼はちょっと落ちるかの。庶民性は一番あるが、そこらのじいちゃんみたいな黄門さまやったな。石坂浩二はずいぶん知的な黄門さまが出てきたなと思って注目したけど、ざんねんやった。
老人D登場 おう、おまえら何つまらん話しよるがぞ。水戸黄門いうたら、やっぱ、由美かおるやないか。毎回見せてくれるお風呂シーンのあのお色気。あーたまらん。
B おっとお。・・おっ・おぬしも好きよのお。
A・C あっはっはっはっははは
A おかしげな奴が来たけん、話が下品になってしもうた。
D 何言うとる。人間なんぼになっても色気と食い気ぞ。それなくしたら、むこん山(丸山・お大師様)が近こなったゆうことぞ。
B 気を取り直してと、助さん格さんはどや。
A 助さんは、これは誰が見ても里見浩太郎やな。杉良太郎は名前ほどやなかったな。格さんは何と言うても横内正。
C うん、そのとうり。「静まれい。この印籠が目に入らぬか」の名せりふ、この格さんでなきゃ。
A 黄門さまと助さん格さん以外では、だれがええぞ。
B 誰がナンチュウても風車のや弥七・中谷一郎。体つきは屋根に飛び上れそ
うな身軽さを感じさせんが、演技がしぶい。弥七が出るだけで画面がぎゅうっと締まる。
C 高橋源太郎。うっかり八兵衛がいい。役柄でバカにしちゃいけん。すごくいい役者やな。
D わしはやっぱり、由美かおるや。一度お代官様になって芸者のお銀の帯をこうくるくるくるうっと解いてみたいのお
一同 うふぉおっと。おぬしも、ワルよ、のお。あっはっはっはっは。
B どうも調子くるうな。ところで、『水戸黄門』は永遠のマンネリズムというか毎回似たような筋やが、それにしても何千回にもなるあの脚本は、とうてい葉村彰子一人で書いてるわけないやろな。
A あれは何百人という脚本家志望の若者が書くんやないか。高山のNくんが東京におった時、彼の友人が応募して採用されたとかされなかったとか聞いたことがある。
C そうか。やっぱ回によっても出来不出来はあるなあ。そいつのこというわけやないけどな。
D ところで、松平健の『暴れん坊将軍―吉宗評判記』が出てから黄門さまの印籠の効きが悪うなっとりゃせんか。
A どういうことぞ。
D いやな。黄門さまは天下の副将軍やろ。吉宗は将軍やな。その将軍様が直接悪人の前で「予の顔、見忘れたか」と恐れ入らそうとしても、悪人バラは全然ゆうこときかん。
A なるへそ。それもそうやな。面白いこと言うやっちゃ、おまえは。
C ・・・・・・
B ちょっと場あ白けさすけんど、黄門さん、ちょっとお節介すぎると思う時がある。百姓や町人が団結して、権力に立ち向かおうとしてる時お節介してしまって彼らの自立の芽を摘んでしまう。敗けるのは仕方なくても百姓や町人の雄々しい姿も見たいなあ。
A それは無理というもんぞ。誰かが、映画か小説でやってくれんとな。
C いや。おれたちがアングラ劇団立ち上げてやるというのも・・・。
B 「新田ふるさとまつり」、・・・復活させるか。
D わしらの劇団の名前は、「夢の徘徊老人舎」がええの。
一同 おおっー。
2013・9・23 自由庵憧鶏(じゆうあんしょうけい)
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