コラム
『俵ランド物語』(たわらんどものがたり)  筆:うつみしこう
                      自由庵憧鶏
                                              じゆうあんしょうけい

Vol.31 『考え方』の問題
-We have ”Any idea” -

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「俵津の赤ひげ」こと長崎東海さんの顕彰碑の建立については、結局、「俵津スマイル_いいまちづくり隊」の事業としては認められなかったようだ。「スマイル」の役員会ではさまざまな意見が出たようだが、わたしが気になったのはこんなところだ。「会としては、田中恒利さんの顕彰碑も私的に有志たちがやったのだから、長崎さんの碑もやはり個々人の思いのある人たちがやったらどうか」という理由だ。とても残念だ。

たとえば、こんな情景を思い浮かべていただきたい。野福峠の田中恒利さんの碑、あんな人物顕彰碑が俵津に100本ある、としたら、というような・・・。それは何を意味するか。俵津には100人もの偉大な人物がいた。その人たちを育んだ偉大な風土があった。自由闊達な、人の才能を伸ばしきる民衆・住民がいた。長くて広くて深い文化の土壌があった。それを顕彰碑として残すという価値判断力と豊かな財力があった・・・ということではないか。

あのね。田中恒利さんの碑はね。選挙を供に闘い、田中さんが俵津にとって稀有の誇るべき人物であることを認識できる優秀な熱意ある同時代の同志の方たちがまだたくさん生きているから、そして、みんな比較的豊かな時代にいるから出来たことなんだな。
長崎さんの亡くなられた昭和三(1928)年頃日本がどうだったか、ちょっと考えてみてください。不況が続き、満州(中国東北部)に侵出した日本は、張作霖爆殺事件を起こし、翌年にはニューヨーク株式市場が大暴落をして、世界大恐慌が始まった。昭和六年には満州事変を起こし亡国に向けた15年戦争へと突き進んだ。とても長崎先生の顕彰碑を建てるような余裕を持てる時代ではなかった。長崎先生を、懇願してわざわざ高知からよんでくるというような情熱を持っていた俵津人にしても。

もうひとつ。日本が豊かになった1970年代以降、全国的なまちづくり(地域おこし)運動が展開された中で、各地域はあらゆる分野でその地域の持つ「宝さがし」をやった。その一環として歴史的人物探しも徹底してなされた。そして、記念館や博物館が建てられ、顕彰の碑が建てられていった。松山の「坂の上の雲ミュージアム」や「子規記念博物館」などはその最たるものだろう。明浜町でも「塔和子」の碑が建立された。わが俵津はそんな歴史的段階さえも踏んではこなかったことになるのか。
ソビエト崩壊の後、レーニンの像が倒されたように「人物」の場合、評価の基準が変われば、おかしなことになる可能性があるが、どうであれ地域が生んだ、地域が育てた偉大な人物を顕彰することは、大事なまちづくり事業なのではないか。エライ人は勝手にエラくなるのかもしれない。だが、地域がその人を範として、人の足を引っ張らず、「人間」を育てる地域づくりをすることを意識しはじめたら、俵津はもっともっと変わるのではないか。「俵津スマイル」のような組織こそ、そうあって欲しいと、わたしは思うのだが。
わたしは理由はどうであれこの事業は「俵津スマイル」の仕事にしてほしかった。「スマイル」は俵津にはじめてできた包括的で総合的な、そして「まちづくりという」はっきりとした目的を持った組織だからだ。その組織にこのような意義ある文化事業を捕まえてほしかった。
今回のことはそのとても大事なきっかけだったのに、とても残念だ。

わたしもいやな経験をしている。数年前、わたしたち俵津文化協会が、カラオケ機器を購入しよう!と募金活動していた時のことだ。「俵津スマイル」にも、いくらかの補助をお願いしたのだが、やはり同じような「論理」で拒絶された。曰く「文化協会のような私的な一団体のためにこの会のお金を使うことはできない。カラオケのマイクなどは、使っていればみんなすぐに飽きて、次から次とグレードの高い新しいものを買わなければならなくなる。そんなものにはお金は出せない」と、担当の市職員に言われたのだった。わたしは大きな失望感を味わった。
たとえば、一本松町(現愛南町)などは、町が「通信カラオケ」設備を導入して町民にカラオケを奨励し、公民館で積極的に町外の者も呼んで大会などを開いている。そういう先進的な実例を見れば、俵津の意識・感覚の遅れ、時代認識の足りなさにわたしなどは呆然としてしまう。この差は一体何なんだ、と。
後述するように、カラオケの「健康効果」は立証されているし、町民が明るく健康になれば、超高齢化社会の大きな問題である老人医療費の削減にもつながるし、介護などの問題解決に一役かえることにもなる。なにより地域がにぎやかに元気になる。一本松町の行政とその職員はそれが分かっているから、「そんなことに」と思われても、自信をもって税金を投入できたのだろう。

わたしは、俵津公民館を建て替える時、老人福祉センターを組み込んだ物にした先人の将来を見通す力に敬服している。この建物を俵津の最高の財産として、これをさらに充実させていくのはわたしたちの役目だと思っている。俵津住民の二人に一人が65歳以上となっている現状を考えれば、わたしはここを老人たちの集う365日のデイサービスセンター化することに一つの方向性があると考える。通信カラオケを配備したカラオケルームはもちろん、100インチくらいのテレビをすえた映画ルームもあっていい(大ホールでの映写会を企画してもいい)。麻雀ルーム、囲碁・将棋ルームもいい(休日にひふみんのような老人と福ちゃんのような子供が将棋している姿なんてとてもいい、想像するだけで楽しくなる景色じゃないですかね)。このコラムの数回前にも提案した喫茶店他の施設もあっていい。考えられる限りのものを取り入れて人が集まるセンターにすることが大事だ。
わたしはこの春、所用があって東京へ行った際、機会あって練馬区役所を訪れたが、そこでは玄関大ホールでピアノコンサートが催されていた。知的障害者が運営するカフェショップがあった。各種会議ができる部屋が数多くあった。最上階では見晴らしのいい大食堂があった。現代の公共建築とはこのようなものなのか!と驚かされた。いかに区民を招き寄せるか、いかに区民の使い勝手を良くして区民のための施設にするかということに徹底的な配慮がなされていたことに感服した。学んでいいのではないか。
さらに、公民館=老人福祉センターで老人同士がお互いを見合う(老々介護?!)、しかも日常レベルで、ということも考えていいのではないか。近くには保育所もあるのでこの俵津のエリアは最高の場所だ(老人と子供は相性がいい)。若者の飲み場所・「スマイルハウス」もある(若者と年寄りの対話の可能性を考えよう)。それらと、「宮崎川花の回廊」構想と組み合わせれば、「福祉と健康のまち・俵津構想」は完成に近ずくんじゃないでしょうかね。
カラオケ機器一つにしても、これくらいのことを考える想像力を、「俵津スマイル」は持っていいんじゃないでしょうかね。

【カラオケの健康効果】
①「幸せホルモン」が出る。(エンドルフィン・ドーパミン・アドレナリン・ノルアドレナリン・セロトニン・オキシトシン)
②免疫系が活性化され、がん抑制効果や若返り効果が期待できる。
③横隔膜が広がり酸素を多く取り込めるから免疫力がアップする。
④脳波のアルファ波が多く出て心身がリラックスする。
⑤脳内の血流が良くなり脳梗塞や認知症の予防・改善につながる。
⑥呼吸筋が鍛えられ健康な体が作られる。
⑦鼻咽喉の振動が耳を刺激して耳鳴りを治す効果やそれがさらに三半規管や喉に伝わり脳を活性化させて、脳血管性疾患の予防につながる。
⑧大声発声により呼吸器の正常化、ぜんそく改善、肺気腫の予防・改善、体細胞の老化予防、血行促進効果、薄毛やがんの抑制効果などが認められている。
⑨歌詞を丸暗記して歌うことにより物忘れや認知症の予防につなげることが出来る。
⑩喉を鍛えることにより誤嚥(性肺炎)を防ぐ効果がある。
⑪カラオケは家族や友人、地域住民との絆を深めていくことが出来る。

『月刊カラオケファン』2017年10月号(8月21日発行)の医学博士・周東寛先生へのインタビュー記事より。先生はご自分の経営する病院で「カラオケ・演歌療法」を実践されておられるとのことです。

わたしは、この、今の西予市の「まちづくり補助事業」、考え方を根本から変えなきゃ、と思いましたねえ。あらゆる制約を取っ払わなくっちゃ。「しばり」を無くさなきゃいけない。すべてを各地区の「自由」(それも徹底した)にするべきだ。
たとえば、そのお金でみんなが飲んでしまってもいい、とわたしは思う。一年間酒を、お金が続く限り飲みまくってウダウダ・・と言い合えばいい。何もそこから生まれなくてもいい。かまわない。そのくらいの覚悟がなきゃこんな事業など何の意味もない。市の職員も、へんな「指導」意識、「道徳」意識(罪悪感?)などは捨てたほうがいい。

まあ、とにもかくにも、「赤ひげ先生・顕彰碑」は、有志が(わたしまでそれにさせられてしまった)募金活動をやって建てることになりました(わたしゃ一世一代の募金のお願い文を書きましたよ)。除幕式の日取りは、町民運動会と同日の9月22日に決まったようです。
なお、ついでですが、『赤ひげ』のあの物語が帰って来るそうです!正式な日はわかりませんが、10月からNHKのBSプレミアムでやるそうです。主人公(新出去定)は、あの船越英一郎さんがやるそうですよ。みなさん、子供たちとぜひ見てください。

2017.8.30 自由庵憧鶏(じゆうあんしょうけい)


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