エッセイ

『私の映画案内』  筆:西田 孝志

 第三回  『マリリンとオードリー』


 皆さん。マリリン・モンローとオードリー・ヘップヴァーン、二人の女優の内、どちらが好きですか?私が思うに紳士方はロリータ好みの方を除いて、多分モンローがお好きだと思う。淑女方は?これはもう断然オードリー!モンローウオークでお尻を振りながら歩き、腰をくねらせて、お色気たっぷりに観衆に投げキッスを送る。それにあの甘ったるい、舌ったらずの馬鹿っぽい言葉使い。あんな女のどこが良いのよ!!はい、分かります。ごもっともです。でもねえ、ちょっとだけ考えてみて下さい。もしかして、それらが全部、彼女の完璧な演技だとしたら?そう考えた事はありませんか?
 私はモンローはディオニュソス(酒の神バッカス)的な女優だと思うのです。情動的で直感的であり、本能的なものが能動的に入り交じった存在だと思うのです。他方、オードリーはアポロン的(太陽神)、規律正しく、計画的、完璧であり、現代的な存在の女優だと思うのです。ニーチェはこう言っています。「文化はアポロンとディオニュソスの並行と対立によって発展した」と。二人の関係を表す言葉。だとは思いませんか?
 マリリンが亡くなった時、イギリスのロック歌手エルトン・ジョンは「キャンドル・イン・ザ・ウインド」という歌を彼女に捧げました。この歌は故ダイアナ妃の葬儀に際しても彼自身の引き語りで故人に捧げられました。訳詞を要約します。 
「さようならノーマ・ジーン(モンローの本名) 知り合うことはなかったけれど あなたは苦しみを顔に出さなかった人でした あなたの回りにはうまく取り入ろうとする連中ばかりで(中略) あなたをこきつかい あなたの名前さえ変えさせました 僕にはそんなあなたの一生が 風の中に置かれた ろうそくのように思えます 雨が降りだしても誰にすがりつけばいいのかを全くしらない一本のろうそく(中略) 孤独とは非常なもの(中略) 新聞はあなたを追いかけ みんなこう書きたてたのです 「マリリン、全裸で発見される」と(中略) これは22列目に座る若者からの言葉 あなたのことをセクシー女優以上の人だと 思っている男からの言葉です」
 実生活でのマリリンは、ロシア文学を好み、「全ての政府はウソをつく」、という有名な言葉を残し、現代アメリカのジャーナリストに多大な影響を与えた孤高のジャーナリスト・I・S・ストーンを応援していた。彼の個人発行新聞を何部も定期購読し、回りの人にも、ぜひ読むべきだと配っていた。
 マリリンについてはそれこそ山の様な伝記が出ているので、これ以上触れない。もし彼女を映像で少しでも知りたいと思うなら次の3本の映画をぜひ順番に見て欲しい。
「紳士は金髪がお好き」
 あけすけで、おおっぴらな、金と欲望の礼賛。唯物論的世界観の中での女の生きざまを描いた喜劇。評論家のジョナサン・ローゼンバウムはこの映画を見て「資本主義の戦艦ポチョムキンである」と評した。
「バス停留所」
 ニューヨークでメソッド演技法を学んだ後に撮られた作品。流れ者の踊り娘が自らの自尊心ゆえにまわりとの対立と葛藤に苦しむが最後に幸せを掴む話。マリリンが本当に鼻水出して泣くんです。
「マリリン七日間の恋」
 マリリンがイギリス映画「王子と踊り子」に出演する為、イギリスに滞在した数日間を彼女の世話をしたイギリス人スタッフの青年の目からみた、ドキュメンタリー風の映画。とても公平・公正に描かれれていて、彼女を見る眼差しが、とても優しく暖かくて印象的だ。メソッド演技を学んだ後睡眠薬の服用が増え、アーサー・ミラーとの生活にも苦しんでいた時期のマリリンが詳しく描かれている。ぜひ見て欲しい。
 以上。何?オードリーの事が全然書かれてない!うるさい!!私の勝手だ!!でもいつか書きます。ゴキゲンヨウ・・・。



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